GUIDE / CAREER
音大卒業後に演奏・指導の仕事を増やすには
演奏で食べていけるかを考える前に、まず「依頼が来る状態」を作る話です。最初の1件をどう取るか、なぜ続かないのかを整理します。
SUMMARY
この記事の要点
- 音楽の仕事は種類ごとに性質が違う。まず棚卸しをして、どれを増やすか決める。
- 最初の1件は紹介から来るが、紹介だけでは自分の努力で増やせない。
- 依頼する側は経歴ではなく、楽器・地域・曜日で探している。
- 単価は先に決めておく。安く受け続けると、良い依頼を受けられなくなる。
- 継続案件を1本持つと、収入の見通しが大きく変わる。
音楽の仕事は1種類ではない
「演奏の仕事」とひとまとめにすると、増やし方が見えなくなります。実際には性質の異なる仕事が並んでいて、入口の作りやすさも、収入の安定度も違います。まず棚卸しから始めます。
| 仕事の種類 | 性質 | 入口の作りやすさ |
|---|---|---|
| トラ・エキストラ | 単発。本番ごとの依頼で、日程が合うかどうかが最優先。 | 作りやすい。人数が必要な編成ほど機会がある。 |
| パート指導 | 単発にも継続にもなる。その楽器を担当できることが条件。 | 作りやすい。継続に発展しやすい。 |
| 合奏指導・全体指導 | 半日単位の拘束。スコアを読む準備が必要。 | 指導経験が見られる。パート指導からの発展が多い。 |
| 個人レッスン | 継続。生徒が増えるほど安定するが、時間帯が限られる。 | 場所の確保が課題。オンラインで補える部分がある。 |
| 伴奏・アンサンブル | 単発から継続まで。楽器によって需要が大きく違う。 | ピアノ・弦は需要が読みやすい。 |
| 学校・地域クラブの指導 | 年度単位の継続になりやすい。手続きが必要。 | これから増える見込み。確認事項が多い。 |
| 編曲・譜面作成 | 納期があるが、場所と時間の自由が利く。 | 実績が可視化しやすい。 |
全部を同時に増やそうとすると、どれも中途半端になります。まず「今の自分が明日にでも受けられるもの」を2つに絞って、そこから広げるほうが早く進みます。
最初の1件はどこから来るか
ほとんどの人の最初の1件は、次のどれかから来ます。
- 1出身校の吹奏楽部・オーケストラ部(顧問の先生からの依頼)
- 2先輩・同級生からの「代わりに行ってくれない?」
- 3所属している、または過去に乗った団体
- 4恩師や、レッスンを受けている先生の紹介
これは自然な流れで、悪いことではありません。最初の1件はこの経路で取るのがいちばん早いので、心当たりがあるなら「トラでも指導でも受けられます」と伝えておいてください。人は、頼めることを知らない相手には頼めません。
伝え方のコツ
「何かあったらお願いします」では、相手は思い出せません。「金管のパート指導と、トランペットのトラを受けています。土日と平日の夜なら動けます」のように、具体的に言っておくと、必要になったときに頭に浮かびます。
紹介ルートだけだと必ず頭打ちになる
紹介は最初の入口としては最強ですが、これだけに頼っていると、ある時点から増えなくなります。理由は構造的なものです。
- 紹介の数は、自分の努力ではほとんど増やせない
- つながりのある地域にしか広がらない(引っ越すと途切れる)
- 一度断ると、次の声がかかりにくくなる
- 相手は「あなたが今も受けているか」を知らないまま、別の人に頼む
- 条件(謝礼・日程)の話を切り出しにくく、断りにくい
特に4番目が見落とされがちです。学生時代に何度か行った団体でも、卒業して数年経つと「もう忙しいだろう」と思われて、声がかからなくなります。あなたが受けられる状態であることは、言わなければ伝わりません。
だからこそ、紹介の経路は残したまま、「知らない人からも見つけてもらえる状態」を並行して作る必要があります。
「探されている条件」で自分を書く
依頼する側が探すとき、最初に見るのは経歴ではありません。コンクールの受賞歴や師事した先生の名前は、条件が合ったあとに効いてきます。最初に確認されるのは次の3つです。
- 1その楽器を担当できるか
- 2その日・その時間に来られるか、通える場所か
- 3連絡が取れるか
つまり、プロフィールで先に埋めるべきは、担当できる楽器、対応できる地域と移動範囲、動ける曜日・時間帯です。ここが空欄だと、実力があっても検討の対象に入りません。詳しい書き方は指導・演奏の依頼を受けるためのプロフィールの作り方にまとめています。
単価を先に決めておく
依頼が来てから金額を考えると、その場の空気で決めることになります。一度受けた金額は次回以降の基準になるため、最初に自分の中で決めておくほうが消耗しません。
移動を含めた時間で考える
2時間のパート指導でも、往復2時間かかるなら、実際に拘束されるのは4時間以上です。「1回いくら」で受けるときは、移動を含めた拘束時間で見合うかどうかを確認します。遠方の依頼を同じ金額で受け続けると、近場の依頼より条件が悪くなります。
安く受け続けることの本当のコスト
低い単価の依頼で土日が埋まると、条件の良い依頼が来たときに受けられません。単価を下げるより、対応できる楽器・地域・曜日の幅を広げるほうが、依頼の総数は増えます。金額の目安は謝礼の考え方に依頼内容ごとの表を載せています。
継続案件を1本持つと生活が変わる
単発の依頼を10件集めるより、月2回の継続指導が1本あるほうが、収入の見通しは安定します。継続案件には次の利点があります。
- 予定が先まで埋まるため、他の依頼を調整しやすくなる
- 毎回の営業が不要になる
- 団体の事情が分かるので、指導の質が上がる
- その団体から別の団体を紹介されることがある
- 本番の演奏依頼につながることがある
継続につながりやすいのは、学校・地域クラブの指導、一般団体の年間パート指導、個人レッスンです。単発のパート指導を受けたときに、「継続でも対応できます」と一言伝えておくだけで、次の依頼の形が変わることがあります。
これから増えるのは学校・地域クラブの依頼
2026年度から、部活動改革は「改革実行期間」に入り、休日の部活動は原則すべて地域展開を目指す方針が示されています。文化部(吹奏楽・合唱など)も対象です。これまで顧問の先生が担ってきた休日の指導を、学校の外の人が担当する場面が増えていく見込みです。
指導者の側から見ると、依頼の出どころが「顧問の先生からの紹介」だけでなく、地域クラブの運営団体や受託事業者へ広がっていくことを意味します。つながりがない人にも機会が届きやすくなる一方で、求められる情報と手続きは具体的になります。詳しくは部活動の「地域展開」と吹奏楽部の外部指導者をご覧ください。
いま準備できること
学校・地域クラブの指導は、中高生を対象とするため、確認しておく事項が一般団体より多くなります。引き受ける前に見ておきたい項目は学校・中高生を指導するときの確認事項にまとめています。
事務まわりで最初に決めておくこと
仕事が増えてから整えようとすると、必ず後手に回ります。最初のうちに決めておくと楽になるのは次の点です。
- 依頼を受け付ける連絡先(個人の携帯番号を出すかどうかを含めて)
- 返信の目安(「2日以内に返す」と決めておくと、判断が早くなる)
- キャンセル時の扱い(何日前まで無償か)
- 交通費の扱い(実費請求か、込みか)
- 依頼の記録(日付・依頼元・内容・金額・交通費をひとつの表に)
- 領収書・請求書のひな形
最後の記録は、確定申告のためだけではありません。「去年この団体にいくらで行ったか」が分かると、次の依頼の条件をすぐ答えられます。
税金のこと
謝礼や報酬を受け取る場合、確定申告が必要かどうかは、収入の額や給与所得の有無など個々の状況によって変わります。源泉徴収されている場合の扱いも依頼元によって異なります。要件は変わることがあるため、税務署または税理士にご確認ください。この記事は税務上の助言ではありません。
よくある質問
在学中から仕事を受けてもよいのでしょうか。
パート指導やトラの依頼では、在学中の方が担当している例は多くあります。学年・専攻を明記し、指導経験がまだ少ない場合はその旨を書いておくと、条件が合う団体から声がかかります。学校の規則でアルバイトや外部活動に制限がある場合は、事前に確認してください。
実績が少ないうちは、単価を低くしたほうがよいですか。
下げすぎないほうが結果的に続きます。一度決めた単価は後から上げにくく、安い依頼で予定が埋まると、条件の良い依頼が来たときに受けられなくなります。単価を下げるより、対応できる範囲(地域・曜日・楽器)を広げるほうが依頼は増えます。
演奏の仕事と指導の仕事、どちらを増やすべきですか。
収入の安定という点では、指導の依頼のほうが継続になりやすい傾向があります。演奏は単発が中心で、季節の波も大きくなります。両方を持ち、指導で土台を作りながら演奏の機会を取る形にしている方が多く見られます。
謝礼を受け取ったら、確定申告が必要ですか。
収入の額や、給与所得があるかどうかなど、個々の状況によって必要かどうかが変わります。金額や条件の要件は制度改正で変わることもあるため、税務署や税理士にご確認ください。いずれの場合も、依頼日・依頼元・金額・交通費を記録しておくと、後の手続きが楽になります。
出典・参考
この記事は一般的な情報提供であり、税務・法務上の助言ではありません。手続きや要件は個々の状況および制度改正によって異なります。
最終更新: 2026/07/24/この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、法律・税務・行政手続の助言ではありません。制度や条件は地域・団体・年度によって異なるため、実際の判断は各自治体・団体の最新の公表資料をご確認ください。
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